【タイトル未定のブログ】

ものぐさな人のある日の出来事だったり。

 ここの人、走る。

 
 昨年の2月。 愛媛マラソン当日。
 部長に騙されたも同然に参加した所長と、営業のKさんを応援するため、僕は沿道に立ってました。
 目の前を走りすぎていく人だかりを見ながら、なんとなく、本当になんとなく「僕も走ってみたい」と思ったのは間違いないですね。 来年(2013年)の愛媛マラソンを。
 
 ただ、距離が問題。 42.195kmあるんですよ。
 
 そんなこんなで9月、大混雑の受付をクリア。 「え、これで本当に?」っていうのが感想。
 何はともあれ登録が完了した時点で走ることは確定。 本当ならば練習を始めるべきだったんですが……暑くてパスしてました。 いや仕事が忙しかったのも事実ですよ。
 遅くとも11月までには始めておきたかったんですが、その月からはまさかの新人教育(というほどでも無かったんですが)と体調不良がピークを迎えてしまい実際に走り始めたのはまさかの二ヶ月前、12月からときたもんです。
 反省するけど後悔しない、を念頭に自分なりに私事の時間を削って走ることに。
 
 が、どうにも走れない。 まだペースが速いのか、単に体力が無いだけなのか。 時期的に駅伝やらマラソンやらが多くあったので、それを眺めては自分との違いをチェック。
 それを意識しながら日常生活ではまず食べる量を減らし、歩く姿勢にも気を遣うように。 走る姿勢を変えるにはまず歩く姿勢から。
 休みの日には走るようにし、せっかくジムの会員なんだから多少仕事で遅くなっても通うようになり、それでも二日連続ではしないように必ず休めるようにして「後悔しない」ように日々を過ごすこと二ヶ月。 一度も10km以上を走ることは無かったんですけどね。
 
 ついに迎えた開催日。
 昨年に引き続き高橋尚子さんがゲストランナーとして来てくださいました。
 
 天気は晴れ。 最高気温は予報では9℃。 マラソン日和。
 受付時の「完走予想時間(自己申告です)」に5時間30分と入力したためスタートブロックは最後のGブロック(いわゆる最後)。 号砲から8分ほど遅れて本当のスタートです。
 走り出してしばらくして気づいたんですが、意外と呼吸が苦しくないんです。
 日頃から走ってる時も多少呼吸が荒くなるものの、それ以上激しくならず走り続けてました。 けど、まさか10kmを超えてもそれを維持できるとは。 自分に驚きましたね。
 
 愛媛マラソンのメインは緩やかなアップダウンの続くバイパス(国道196号線)と睨んでました。
 たまたま後ろを走ってるランナーの会話が聞こえてきまして、
「去年も走って、この坂で参ったんよ〜」
 な、なるほど。 確かに。
 1kmも走らない間になんと40mも標高が変わってるんですから。
 少し向こうに目をやれば、黒い固まりがその坂を登っていってます。 もちろん僕らも、じきにあの一団となるわけで……目の当たりにすると心が折れそうになります。
 が、まだ10kmちょっと。
 前半はとにかく時間(と距離)を稼いでおかないと。
 素人なりに考えてもいるんです。 浅知恵とも言いますが。
 
 途中の給水所では必ず水分を摂る(去年走った所長の教え)、足を止めない(歩いてもいいから止まらない)、給食所では取る物を選ぶ(饅頭とかありますがそれは出来ればパスで、バナナがあれば良し)。
 とにかく止まらないように、「後悔しない」ためにも足を踏み出し続けます。
 
 そういえば、普段走ってて気づいたんですが、「地面を蹴って」走るよりも「重心を前に傾ける感じ」の方が消耗を押さえられることに気づきました。 某マンガのお陰です。
 
 それでも第一折り返し点のあたりではさすがに厳しくなり、とうとう歩いてしまいました。 呼吸が苦しくではなく、コースのアップダウンによる足の痛みが(ここでは主に太ももつけ根辺りが)ピークを迎えていました。 加えて空腹です(←超重要
 ここまで関門通過時間は、約15分ぐらい余裕を持って通過。
 歩いたあと、再び走り始めると下腹部あたりにも痛みが走るようになっていましたが、すぐに感じなくなってしまいます。 良いのか悪いのかは分かりません。
 
 第二折り返し地点も緩やかな坂。 止まる気は無いけども、進むのが、とても、辛い。
 それでもまだ、足は動くし腕も振れる。 痛みは我慢。 見方を変えれば我慢できる程度だったわけです。
 後悔だけはしたくない、これが必ず頭に浮かんでました。
 
 折り返し点を通過、再び国道196号線――すなわち、アップダウン再び、です。
 ここでさらなる足の痛みが。 右足のくるぶしの下辺りから、足裏にかけてが痛い。 体重をかけると余計に。
 こりゃどうしたことか。 練習でこんな痛みは感じたことないぞ? 似たような痛みと言えば……やめやめ。 それを思い出してどうなるもんでも無いし。
 上り坂では恥ずかしながら歩き、下り坂&平坦地では走るという方法へ変更。 前半を走り続けていた分、各関門の予定時刻に対して余裕があったのが助かりました。
 
 
 何気なくウェアの袖で顔を拭うと汗による湿り気はなく、かわりに塩の結晶でしょうか? 黒いウェアが、視界の端でもはっきりと分かるぐらい白く見えます。
 給水所でスポーツドリンクを積極的に取っていたとはいえ、足りているか、ちゃんと吸収できているか分っかんないな〜。
 気がつきゃ日も傾いてるし、日差しも夕方を思わせる色合いを含んできてる。
 焦ってはいけない。
 まだ10分以上の余裕があったじゃないか。
 焦って急いで体にダメージを溜めるわけにはいかない。
 
 歩いている時に先に行ってしまった人を、走って追い抜き、また歩いている時に追い抜かれる。
 端から見たら「なにやってんだ」的な展開に見えてたでしょう。 けど、こっちは真剣。
 
 ようやく坂道を抜け、残り10kmを切りました。 日差しもオレンジ色が濃くなってきてる。 制限時間まで1時間も無いか!?
 それでもまだ余裕がある、はず。
 残り5km。 まだ時間に余裕が残ってる。
 あと2km。
 ラストスパート――といきたかったんですが、足の痛みがそれを許しません。 とにかく歩いてたんじゃ間に合うかどうか。 走ることに。
 ペースはもはやスタート時と比べるまでもなくがた落ち(1km/10分ほど)。 歩くよりは速い程度。
 1kmを切った。 ここまで来たら走るのを止めるわけにはいかない。
 沿道からの声援が聞こえます。 なんて言ってたのかは覚えてません。
 痛みは無視。 「もう間に合うから、歩こう」なんて思いも無視。 今、どんな顔して走ってるんだろうか。
 
 ようやくゴールが見えてきました。
 そこには昨年と同じく、高橋尚子さんが続々と帰ってくるランナー達とハイタッチをしてます。
 そして自分もハイターッチ!!
 見た目も小柄ですが、その手もまた思った以上に小さかったですね。
 そしてゴールラインを……越える!
 
 
 やった。
 
 やっちゃったよ〜。
 
 走るのが大の苦手な自分が、フルマラソンにまさかの出場。
 初出場で完走。 記録は5時間52分。 約8分残しての完走。
 
 思わず涙がにじんできた〜。
 

 
 完走賞として、今治タオルのバスタオルと完走記録証を頂きました。
 すでにまともに歩くことも出来ず、立つことも出来ず、よたよたと会場を歩きながら、それでも記録証を眺めて、今日自分が成し遂げたこと、このためにしてきたことを思い出し、おもむろに空を見上げ「やったよ〜」と、誰にともなく呟く僕は変に見えてたのかも知れませんが、きっと同じ気持ちの人も多くいたはず。
 
 いたずらに長くなってしまいましたね。 あと数行ですのでお許しを。
 
 今回は車ではなく、JRで松山入りをしていましたので帰りもJRです。
 座席で揺られながら、同じ車両に乗ってたんでしょうね、割と近くの座席からこんな会話が聞こえてきました。 完走した人と応援に来ていた人でしょうね。
 
「あれって、なんでみんなゴールが近くなると走るんですかね?」
「そりゃー、まわりで色んな人が応援してくれてるからなんじゃない?」
「あんだけ、歩くんもしんどそうにしてんのに?」
「でも、俺も走りたくなったからな〜」
 
 ……僕も、そうだったのかも知れないな。
 
 あの日、あの場所を、走りきった人も、走りきれなかった人にも、共に祝福を。
 ではでは。
 
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